事業場外みなし労働時間制における「労働時間を算定しがたいとき」が争点となった裁判で、最高裁判所は令和6年4月16日、みなし労働時間制の適用の余地があるとの判断を示し、これを適用できなといとした二審の高裁判決を破棄、適用の可否を改めて検討させるため審理を同高裁に差し戻しました。
みなし労働時間制とは
「みなし労働時間制」とは、実際に働いた時間にかかわらずあらかじめ決められた労働時間を働いたとみなす制度です。
法律で定められた労働者の労働時間は1日8時間、週40時間ですが、労働時間の管理が困難な業務や業態、業務内容などがあることから、柔軟な労働制度としてこのような制度が存在しています。
「みなし労働時間制」が適用される例としては、
- 営業職など事業場外で業務することが多く正確な労働時間の算出が難しい場合
- 専門性が高い仕事で労働者に時間管理を任せた方が高いパフォーマンスが期待できる場合
などが考えられます。
みなし労働時間制のメリット・デメリット
労働者側 | 使用者側 | |
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メリット |
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デメリット |
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「事業場外みなし労働時間制」が認められる要件
「みなし労働時間制」の1つである、「事業場外みなし労働時間制」が認められるためには、
- 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事したこと
- 労働時間を算定し難いこと
と定められています。(リーフレット【「事業場外労働に関するのみなし労働時間制」の適正な運用のために】)
今回の裁判について
今回の裁判は労働者側が起こしたもので、以下のような状況でした。
- 労働者は外国人技能実習の監理団体を運営する協同組合に在籍
- この労働者は外国人技能実習生の受入れ企業を訪問し、実習生の通訳、相談や受入れ企業を指導する業務に就いていた。
- 業務に従事するに当たって、同法人の指示は基本的になく、受入れ企業訪問などのスケジュール管理も労働者の裁量に委ねられていた
一審と二審では、指導員が訪問先や業務時間を記した業務日報を提出していたことから労働時間の算定は可能と判断。みなし労働時間制の適用が否定され、外国人の技能実習に係る監理団体に残業代の支払いが命じられていました。
これに対し、今回の最高裁では、指導員の業務が多岐にわたり、スケジュール管理も自ら行っていたことを踏まえ、「管理団体が勤務状況を具体的に把握することが容易とはいえない」と指摘し、みなし労働時間制の適用の可否を改めて検討する必要があるという判断になりました。
参考サイト
最高裁判所ホームページ【令和6年4月16日・最高裁判所第三小法廷判決】
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92906
東京労働局【「事業場外労働に関するのみなし労働時間制」の適正な運用のために】
ttps://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/jigyougairoudou.pdf