令和7年10月1日から、最低賃金の大幅な引上げや育児・介護休業制度の拡充といった重要な制度改正が施行されました。

改正はすでに始まっており、中小企業にとっては「対応しなければならない義務」であると同時に「人材定着や採用強化につながるチャンス」でもあります。
本記事では、制度改正の内容を整理したうえで、賃金規程や育児・介護休業規程の整備の重要性、さらに賃上げに活用できる助成金(業務改善助成金)についてご紹介します。

令和7年10月から始まった制度改正のポイント

  • 最低賃金の大幅引上げ

令和7年10月の改正により、最低賃金は全国的に大きく引き上げられました。都道府県ごとに差はあるものの、全国加重平均は過去最大級の上昇幅です。
これにより、中小企業では「既存の賃金規程や賃金体系の見直し」が不可欠となっています。とくに時間給や短時間労働者を多く抱える業種では影響が大きく、賃上げの原資をどう確保するかが喫緊の課題です。

  • 育児・子育て支援制度の拡充

3歳以上から小学校就学前の子を持つ労働者に対し、企業は「柔軟な働き方制度」を複数用意し、従業員が選択できるよう義務付けられました。
短時間勤務やフレックスタイム、テレワークなどを整備し、実際に運用できる仕組みが求められます。単なる規程上の記載にとどまらず、現場で使える制度設計が必要です。

  • 意向確認・周知義務の新設

妊娠・出産時や子が3歳になる前の時期に、事業主は従業員の意向を確認し、利用できる制度を周知することが義務化されました。
「知らなかったから使えなかった」という状況を防ぐための措置であり、企業には記録の保存や周知フローの整備も求められます。

  • 教育訓練休暇給付金の創設

離職せずに教育訓練を受ける従業員を支援するため、新たに「教育訓練休暇給付金」がスタートしました。従業員がまとまった休暇を取得してスキルアップを図る際に活用できます。企業にとっては、従業員の能力向上をコスト面で後押しできる制度です。

  • リスキリング支援融資制度の創設

教育訓練費や生活費を支援する新しい融資制度も導入されました。
人材不足が深刻化するなか、従業員が学び直しをしながら働ける仕組みを整備することは、企業の競争力強化につながります。

制度改正が中小企業に与える影響

これらの改正は一見すると「負担増」と受け止められがちですが、裏を返せば「働きやすさの見える化」「会社の魅力アップ」につながります。

  • 最低賃金引上げ → 賃金体系の透明化・人材定着
  • 育児・介護休業制度の拡充 → 子育て世代の離職防止
  • 意向確認義務 → コミュニケーション強化・信頼関係向上
  • 教育訓練給付 → 従業員のスキルアップ・企業の生産性向上

ただし、これらを実効性あるものとするには、就業規則や社内規程の整備が欠かせません。

規程整備の重要性

賃金規程の整備

最低賃金改定を反映するだけでなく、昇給ルールや諸手当の基準を明文化することが重要です。これにより、従業員の納得感を高め、不公平感をなくすことができます。

育児・介護休業規程の改訂

今回の法改正内容を盛り込むことは必須です。制度を整備するだけでなく、「従業員が実際に使える仕組み」にするためのルール作りも必要です。

周知・運用体制の構築

意向確認や制度周知の義務化に対応するため、社内の運用フローを文書化し、担当部署を明確にすることが望まれます。

助成金で賃上げ負担を軽減

賃金引上げを行う企業にとって頼りになるのが 業務改善助成金 です。

業務改善助成金の概要

  • 対象:中小企業・小規模事業者
  • 条件:事業場内最低賃金を一定額以上引き上げること
  • 支給対象:生産性向上につながる設備投資費用、人材育成費、コンサルティング費用など

規程整備と助成金の相乗効果

  • 賃上げを行う前に 賃金規程を整備しておくことで、助成金申請の信頼性が高まる
  • 育児・介護休業規程をあわせて見直すことで「働きやすさ+経済的支援」の両立が可能
  • 助成金を活用した投資によって業務効率が向上すれば、賃上げの持続性も高まる

実際に取り組むためのステップ

1.現行規程の点検

  • 賃金規程が最低賃金改定に対応しているか
  • 育児・介護休業規程に新制度が反映されているか

2.不足部分の洗い出し

  • 意向確認フロー、周知方法の明文化
  • 教育訓練休暇やリスキリング制度に関する記載有無

3.改訂案の策定と従業員説明

  • 規程変更は従業員への周知が義務
  • 説明会や社内資料でわかりやすく伝える

4.賃上げ計画と助成金申請準備

  • 賃金体系見直しと並行して、業務改善助成金の利用を検討
  • 投資対象(機械導入、人材育成など)を明確化

まとめ

令和7年10月から始まった制度改正は、中小企業にとって確かに負担も大きいですが、同時に会社の体制を強化する好機です。

  • 賃金規程や休業規程を整備して、法令遵守と働きやすさを両立
  • 助成金を活用して、賃上げと業務改善を同時に実現
  • 制度改正を追い風に、人材定着・採用力強化につなげる

「どこから始めればよいか分からない」という場合は、まず現行規程の点検から始めてみましょう。
当事務所では、規程の確認から改訂のご提案、さらに助成金活用まで一貫してサポートしております。
スムーズに対応を進めたいとお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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