肝疾患の障害認定基準について

認定要領 ~ 障害の等級とそのめやす ~

障害の程度 障害の状態

1級

長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの 
2級 長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの 
3級 身体の機能に、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの 

障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療および病状の経過、具体的な日常生活状況などにより、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものとされています。

障害等級の例

肝疾患の障害各等級に相当すると認められるものを一部例示すると、次のとおりです。

障害の程度

障害の状態
1級
  • 検査成績および臨床所見のうち高度異常が3つ以上
  • 一般状態区分表のオに該当するもの 
  • 高度異常が2つおよび中等度の異常が2つ以上
  • 一般状態区分表のオに該当するもの
2級
  • 検査成績および臨床所見のうち中等度または高度の異常が3つ以上
  • 一般状態区分表のエまたはウに該当するもの
3級
  • 検査成績および臨床所見のうち中等度または高度の異常を2つ以上
  • 一般状態区分表のウまたはイに該当するもの

障害の状態の判断基準

一般状態区分

区分

一般状態
  • 無症状で社会活動ができる。
  • 制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえる。
  • ​軽度の症状がある。
  • 歩行、軽労働や座業はできる (例えば、軽い家事、事務など)
  • 肉体労働は制限を受ける。
  • 歩行や身のまわりのことはできる。
  • 時に少し介助が必要なことがある。
  • 日中の50%以上は起居している。
  • 軽労働はできない。
  • 身のまわりのある程度のことはできる。
  • しばしば介助が必要である。
  • 日中の50%以上は就床している。
  • 自力では屋外への外出等がほぼ不可能である。
  • 身のまわりのことができない。
  • 常に介助を必要とする。
  • 終日就床を強いられる。
  • 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られる。

臨床所見

肝疾患の主要症状は、次の自覚症状と他覚所見があります。

  • 自覚症状・・・易疲労感、全身倦怠感、腹部膨満感、発熱、食欲不振、 悪心、嘔吐、 皮膚そう痒感、吐血、下血、有痛性筋痙攣など
  • 他覚所見・・・肝萎縮、脾腫大、浮腫、腹水、黄疸、腹壁静脈怒張、食道・胃静脈瘤、肝性脳症、出血傾向など

検査成績

検査は、まず、血球算定検査、血液生化学検査が行われます。
さらに、肝炎 ウイルス検査、血液凝固系検査、免疫学的検査、超音波検査、CT・MRI検査、腹 腔鏡検査、肝生検、上部消化管内視鏡検査、肝血管造影等が行われます。

検査項目および異常値

検査項目/臨床所見 基準値 中等度の異常 高度異常
血清総ビリルビン
 (mg/dℓ)
0.3~1.2 2.0以上以下3.0 3.0超
血清アルブミン
(g/d ℓ)
(BCG 法)
 
4.2~5.1 3.0以上以下3.5 3.0未満
血小板数
(万/μ ℓ) 
13~35 5以上未満10 5未満
プロトロンビン 時間
(PT)(%)
 
70超~130 40以上以下70 40未満
腹水 腹水あり 難治性腹水あり
脳症 Ⅰ度 Ⅱ度

昏睡度分類

昏睡度 精神症状 参考事項
  • 睡眠-覚醒リズムに逆転。
  • 多幸気分ときに抑うつ状態。
  • だらしなく、気にとめない態度。 
  • あとで振り返ってみて判定できる。 
  • 指南力(時、場所)障害、物をとり違える(confusion)
  • 異常行動(例:お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てるなど)
  • ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し会話が出来る)
  • 無礼な言動があったりするが、他人の指示には従う態度を見せる。 
  • 興奮状態がない。
  • 尿便失禁がない。
  • 羽ばたき振戦あり。 
  • しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる。
  • 嗜眠状態(ほとんど眠っている)。
  • 外的刺激で開眼しうるが、他人の指示には従わない、または従えない(簡単な命令には応じえる)。 
  • 羽ばたき振戦あり。( 患者の協力がえられる場合)
  • 指南力は高度に障害。 
  • 昏眠(完全な意識の消失)。
  • 痛み刺激に反応する。 
  • 刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみら れる。 
  • 深昏睡
  • 痛み刺激にもまったく反応しない。 
 

認定における留意点

肝臓移植の取り扱い

  • 肝臓移植を受けたものにかかる障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績および予後などを十分に考慮して総合的に認定することとされています。
  • 障害年金を支給されている者が肝臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して、術後1年間は従前の等級とされます。

その他の注意点

  • 障害の程度の判定にあたっては、検査成績および臨床所見によるほか、 他覚所見、他の一般検査および特殊検査の検査成績、治療および病状の経過なども参考とし、 認定時の具体的な日常生活状況などを把握して、総合的に認定することとされています。
  • 検査成績は、その性質上変動しやすいので、肝疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとされています。
  • 肝硬変は、その発症原因によって、病状、進行状況が異なるので、各疾患固有の病態に合わせて認定されます。
  • アルコール性肝硬変については、継続して必要な治療を行っていることおよび検査日より前に 180 日以上アルコールを摂取していないことについて、確認のできた者に限り、認定を行うものとされています。
  • 慢性肝炎は、原則として認定の対象となりませんが、「2.障害等級の例」に掲げる障害の状態に相当するものは認定の対象とされています。
  • 食道・胃などの静脈瘤については、吐血・下血の既往、治療歴の有無およびその頻度、治療効果を参考とし、検査項目および臨床所見の異常に加えて、総合的に認定するとされています。
    特発性細菌性腹膜炎についても、同様とされています。
  • 肝がんについては、検査項目および臨床所見の異常に加えて、肝がんによる障害を考慮し、本節および悪性新生物による障害」の認定要領により認定することとされています。ただし、本件検査項目および臨床所見の異常がない場合は、「悪性新生物による障害」の認定要領により認定することとされています。

対象となる傷病例

肝炎、肝硬変、肝腫瘍、肝臓がんなど

障害認定基準

日本年金機構が発出している肝疾患の障害認定基準(原文)は下のリンクからも見ることができます。

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