呼吸器疾患の障害認定基準について

障害の区分は4つ

呼吸器疾患による障害の認定の対象は、そのほとんどが慢性呼吸不全によるものであり、特別な取扱いを要する呼吸器疾患として肺結核じん肺気管支喘息があげられています。

  • 呼吸不全
  • 肺結核
  • じん肺
  • 気管支喘息

認定基準 ~ 障害の等級とそのめやす ~ 

障害の程度

障害の状態
1級
  • 長期にわたり安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級
  • 日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級
  • 労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度のもの

呼吸器疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況などにより総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも 1 年以上の療養を必要とするものとされています

肺結核

肺結核による障害の程度は、病状判定および機能判定により認定されます。

障害等級の例

肺結核の障害各等級に相当すると認められるものを一部例示すると、次のとおりです。

障害の程度 障害の状態
1級
  • 認定の時期前 6月以内に常時排菌がある。
  • 胸部X線所見が日本結核病学会病型分類(以下「学会分類」という。)のⅠ型(広汎空洞型)、またはⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが 3(大)である。
  • 長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とする。
2級
  • 認定の時期前 6 月以内に排菌がない。
  • 学会分類のⅠ型もしくはⅡ型、またはⅢ型で病巣の拡がりが 3(大)である。
  • 日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする。
  • 認定の時期前 6 月以内に排菌がある。
  • 学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが 1(小)、または 2(中)である。
  • 日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする。
3級
  • 認定の時期前 6 月以内に排菌がない。
  • 学会分類のⅠ型もしくはⅡ型、またはⅢ型で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行している。
  • 労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする。
  • 認定の時期前 6 月以内に排菌がある。
  • 学会分類のⅣ型である。
  • 労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする。

認定における留意点

  • 肺結核の病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所 見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、 治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況などにより総合的に認定されます。 
  • 肺結核に他の結核、または他の疾病が合併している場合は、その合併症の軽重、治療 法、従来の経過などを勘案した上、具体的な日常生活状況などを考慮するなどして、総合的に認定することとされています。
  • 肺結核および肺結核後遺症の機能判定による障害の程度は、「呼吸不全」の認定要領によって認定します。 
  • 加療による胸郭変形は、それ自体は認定の対象となりませんが、肩関節の運動障害を伴う場合には、「肢体の障害」の「上肢の障害」として、その程度に応じて併合認定の取扱いを行います。
  • 「抗結核剤による化学療法を施行しているもの」とは、少なくとも 2 剤以上の抗結核剤により、積極的な化学療法を施行しているものをいいます。

じん肺

じん肺による障害の程度は、病状判定および機能判定により認定されます。

障害等級の例

じん肺の障害各等級に相当すると認められるものを一部例示すると、次のとおりです。

障害の程度 障害の状態
1級
  • 胸部X線所見がじん肺法の分類の第 4 型であり、大陰影の大きさが 1 側の肺野の 1/3 以上である。
  • 長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とする。
2級
  • 胸部X線所見がじん肺法の分類の第 4 型であり、大陰影の大きさが 1 側の肺野の 1/3 以上である。
  • 日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする。
3級
  • 胸部X線所見がじん肺法の分類の第 3 型である。
  • 労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする。

認定における留意点

  • じん肺の病状による障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無および程度、具体的な日常生活状況などにより総合的に認定することとされています。
  • じん肺の機能判定による障害の程度は、「呼吸不全」の認定要領によって認定されます。

呼吸不全

呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2 分圧と動脈血 CO2 分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいいます。認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全です。

障害等級の例

呼吸不全の障害各等級に相当すると認められるものを一部例示すると、次のとおりです。

障害の程度 障害の状態
1級
  • 下記のA表およびB表の検査成績が高度異常を示す。
  • 一般状態区分表のオに該当する。
2級
  • 下記のA表およびB表の検査成績が中等度異常を示す。
  • 一般状態区分表のエまたはウに該当する。
3級
  • 下記のA表およびB表の検査成績が軽度異常を示す。
  • 一般状態区分表のウまたはイに該当する。
A表(動脈血ガス分析値)
区分 検査項目 単位 軽度異常 中等度異常 高度異常
動脈血O₂分圧 Torr 70~61 60~56 55以上
動脈血CO₂分圧 Torr 46~50 51~59 60以上

(注)動脈血ガス分析値の測定は、安静時に行うものとされています。

(注)病状判定に際しては、動脈血 O₂分圧値を重視します。

B表(予測肺活量1秒率)
区分 検査項目 単位 軽度異常 中等度異常 高度異常
予測肺活量1秒率 40~31 30~21 20以下

一般状態区分

 区分 一般状態
  • 無症状で社会活動ができる。
  • 制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえる。
  • 軽度の症状がある。
  • 歩行、軽労働や座業はできる(例えば、軽い家事、事務など)
  • 肉体労働は制限を受ける。
  • 歩行や身のまわりのことはできる。
  • 時に少し介助が必要なこともある。
  • 日中の 50%以上は起居している。
  • 軽労働はできない。
  • 身のまわりのある程度のことはできる。
  • しばしば介助が必要。
  • 日中 50%以上は就床している。
  • 自力では屋外への外出などがほぼ不可能である。
  • 身のまわりのこともできない。
  • 常に介助を必要とする。
  • 終日就床を強いられる。
  • 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られる。

認定における留意点

  • 慢性呼吸不全を生じる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常多など岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患ではありません
  • 呼吸不全の主要症状は、以下の自覚症状と他覚症状があります。

 ・自覚症状・・・咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れなど

 ・他覚症状・・・チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症など

  • 検査成績としては、動脈血ガス分析値予測肺活量1秒率および必要に応じて行う運動負荷肺機能検査などがあります。 
  • 呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先しますが、その他の検査成績なども参考とし、認定時の具体的な日常生活状況などを把握して、総合的に認定します。 

気管支喘息

障害等級の例

気管支喘息の障害各等級に相当すると認められるものを一部例示すると、次のとおりです。

障害の程度 障害の状態
1級
  • 最大限の薬物療法を行っても発作強度が大発作となる。
  • 無症状の期間がない。
  • 一般状態区分表のオに該当する。
  • 予測肺活量 1 秒率が高度異常(測定不能を含む)。
  • 動脈血ガス分析値が高度異常で常に在宅酸素療法を必要とするもの。
2級
  • 呼吸困難を常に認める。
  • 常時とは限らないが、酸素療法を必要とする。
  • 一般状態区分表のエまたはウに該当する。
  • プレドニゾロンに換算して 1 日 10 ㎎相当以上の連用、または 5 ㎎相当以上の連用と吸入ステロイド高用量の連用を必要とするもの 。
3級
  • 喘鳴や呼吸困難を週 1 回以上認める。
  • 非継続的なステロイド薬の使用を必要とする場合がある。
  • 一般状態区分表のウまたはイに該当する。
  • 吸入ステロイド中用量以上および長期管理薬を追加薬として2剤以上の連用を必要とする。
  • 短時間作用性吸入β₂刺激薬頓用を少なくとも週に 1 回以上必要とするもの 。

(注)上記表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであることとされています。

一般状態区分

 区分 一般状態
  • 無症状で社会活動ができる。
  • 制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえる。
  • 軽度の症状がある。
  • 歩行、軽労働や座業はできる(例えば、軽い家事、事務など)
  • 肉体労働は制限を受ける。
  • 歩行や身のまわりのことはできる。
  • 時に少し介助が必要なこともある。
  • 日中の 50%以上は起居している。
  • 軽労働はできない。
  • 身のまわりのある程度のことはできる。
  • しばしば介助が必要。
  • 日中 50%以上は就床している。
  • 自力では屋外への外出などがほぼ不可能である。
  • 身のまわりのこともできない。
  • 常に介助を必要とする。
  • 終日就床を強いられる。
  • 活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られる。

認定における留意点

  • 慢性気管支喘息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況などを把握して、総合的に認定することとしされています。
  • 全国的に見て、喘息の治療が必ずしも専門医(呼吸器内科等)が行っているとは限らず、また、必ずしも「喘息予防・管理ガイドライン2009(JGL 2009)」に基づく治療を受けているとは限らないことに留意が必要とされています。
  • 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理があります。このため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要があるとされています。
  • 喘息+肺気腫(COPD)」あるいは、「喘息+肺線維症」については、「呼吸不全」の基準で認定します。

その他認定における留意点

在宅酸素療法にかかる取扱い

  • 常時(24 時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは 3 級と認定されます。
  • 臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況などによっては、さらに上位等級に認定することとされています。
  • 障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して 1 年 6 月を超える場合を除く。)となります。 

肺血管疾患にかかる取扱い

  • 原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患については、前記のA表 および認定時の具体的な日常生活状況などによって、総合的に認定することとされています。

慢性肺疾患にかかる取扱い

  • 慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは 3 級と認定されます。
  • 治療及び病状の経過、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されます。
  • 慢性肺疾患では、それぞれ個人の順応や代償という現象があり、また他方では、多臓器不全の病状も呈してくることから、呼吸機能検査成績が必ずしも障害の程度を示すものとは言えないとされています。

肺手術後の初診日について

  • 肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められています。

対象となる傷病例

中皮腫、肺気腫、間質性肺炎、ぜんそく、肺結核、肺線維症、肺がん、じん肺、肺胞のう症、気管支喘息、気管がん、気管支拡張症、慢性呼吸不全など

障害認定基準

日本年金機構が発出している呼吸器疾患の障害認定基準(原文)は下のリンクからも見ることができます。

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