2025/4/18

京都市交通局のバス運転手が、勤務中に1,000円の運賃を着服したほか、停車中に電子たばこを5回使用したことを理由に懲戒免職となり、退職金約1,211万円の全額が不支給とされました。
この職員は「処分が重すぎる」として、退職金不支給処分の取り消しを求めて提訴しました。
一審・二審の判断
裁判所は次の点を踏まえ、退職金不支給処分を違法と判断しました。
- 着服額は少額(1,000円)で、すでに弁済済み
- 勤務歴は29年、表彰歴もあり
- 他に金銭関連の懲戒歴はなし
- 喫煙行為も乗客不在時であり、運行に支障なし
これらの事情から「退職金を一切支給しないのは過酷すぎる」として、取り消しを認めました。
最高裁の判断(令和7年4月17日)
最高裁はこれを覆し、「退職金不支給は適法」との判断を示しました。
- 少額であっても職務中の公金着服は重大な非違行為
- 運転手は単独で金銭を扱う職務であり、信頼性が極めて重要
- 喫煙類似行為も勤務態度に問題あり
- 発覚後、着服を一度否認した態度も重視
これらの点から、「管理者の判断は社会通念上、妥当性を欠くものではなく、裁量の範囲内」と結論づけました。
まとめ
本判例は、職務上の金銭管理に対する信頼性の重視、そして懲戒処分に伴う退職金制限の妥当性判断において、管理側の裁量が広く認められることを示したものです。
特に公務職場や公共サービス業務においては、「たとえ少額の不正でも、職務の性質上重大な違反」として厳しく評価されうる点に、改めて注意が必要です。